詞:谷 琢磨
曲:谷 琢磨
編曲:多ヶ谷 樹
歌:実験台モルモット
歌:実験台モルモット
『良い子のための感傷キセカヱ型録』収録
僕の家に警察が押し寄せた。
鍵を頑なに閉めたドアを、あっさりと蹴破って。
強盗でも放火でも殺人でもない。
僕は溜息を吐いた罪で捕まったのだ。
なぜ溜息を吐いたのかと、
朝も夜も問い詰められた。
僕は溜息を吐きながら、謝り続けた。
死んでいった猫の名前を、只々々…
繰り返し呟きながら。
世界中の独りぼっちの溜息が集まり、
大きな大きな虚無の雲を作り、
時折日本一帯に涙を撒き散らす。
その雨に打たれると人は皆、
自殺をしたくなるらしい。
ああ僕もそうだった。
ああ僕も被害者なんです。
ごめんなさい。
生きて罪を償えと放り出された。
あの日から僕は感傷の抜け殻になった。
雨は日増しに強くなり、溺れながら鬱積を泳いだ。
皆黒眼は無く、なぜか空に手を伸ばしていた。
死んだはずの猫がこちらへ泳いできて僕に言う。
『まだ生きていたのか』と。
罪をまた積み重ねていく。割れた硝子の破片を。
どれを重ねると澄んで見えるのか、痛みに耐えながら。
満月に届くように高く高く高く。
あの光の穴が僕を終わらす出口だと知った日から。
世界中の独りぼっちの溜息が集まり、
大きな大きな虚無の雲を作り、
今日も日本一帯に涙を撒き散らす。
その雨に打たれると人は皆、
自殺をしたくなるらしい。
明日の経済を担う政治家たちも。
駅で別れを惜しむ恋人たちも。
ああ僕もそうだった。
ああ
ロイター通信によると、日本人全員が自殺したと。
不思議なことに、その死体は皆、笑顔だったと。