2018/9/11

【歌詞】ピカピカのバッジ / 実験台モルモット

ピカピカのバッジ

詞:谷 琢磨
曲:谷 琢磨
編曲:多ヶ谷
歌:実験台モルモット
『箱庭の音樂会』収録


1人でも生きて行けるようにと、心臓の中に部屋を作った。
入口にはピカピカのバッジを飾った。僕に似合わずきれいだった。
きれいだった。

それから僕は1日中、部屋に篭って泣いちゃうんだ。
ティッシュなんて持ってないから、身体を千切って悲しみ拭いた。

白桃色の壁に凭れながら、剥がれた瘡蓋を貼り合わせた。
透明の鉛筆で描き直した。傷を塞げば塞ぐほどバッジは輝く。

腕が千切れそうになった。
胸が破れそうになった。
徐々に身体を引き裂きながら、
不確かなものを描き続けた。
掻き毟る指。生きているよ僕。
心のいちばん隅っこから、劈く叫び声。
夜の闇は響かず、僕はひとつの記号になった。

せっかく部屋を作ったのに、どこにいても落ち着かなかった。
鼓動が五月蝿くて、僕は僕から逃げれないと思い知った。

眠れずにバッジを眺めていた。誰かが僕の心臓をノックした。
優しい声がした。すべてが信じられなくて僕は、
また部屋の奥へと逃げ出したんだ。

血まみれの腕で泣いた。
破れた胸なのに痛んだ。
徐々に身体を引き裂きながら、
不確かなものを描き続けた。
ここにいるよ。生きているよ僕。
心のいちばん隅っこから、劈く叫び声。
夜の闇に響いて、僕の記号は歌になった

優しい声がした。『バッジを交換しませんか?』
血まみれの僕を見て、がっかりされるのが恐かったんだ。

どうして腕を千切っちゃったんだろう。
どうして胸を破いちゃったんだろう。
僕は走った。星の闇空を。
消えそうなバッジ。解り合うための光。
100点満点じゃないから、たくさん遠回りした。
閉じ止めた世界から、見せたくて走ってきたんだ。
身体はもうなくても、あげたくて走ってきたんだ。
僕の心臓と、ピカピカのバッジ。

君にあげたくて。

走ってきたんだ。